雇用と経営を両立

【雇用と経営を両立】雇用調整助成金の概要と申請方法を徹底解説!

「経営危機に直面しても、大切な従業員を手放したくない」—そんな経営者の切実な願いに応えるのが「雇用調整助成金」です。

景気低迷や市場変化に直面したとき、この制度は企業と労働者の双方を守る強力な手段となりえます。労働者の雇用を維持しながら資金繰りの改善を実現できる、まさに経営者の味方です。

本記事では、雇用調整助成金の使い方や支給額、申請の手続きについてわかりやすく解説します。労働者との信頼関係を守りながら、企業存続への道を切り開きましょう。

【概要】雇用調整助成金とは?

雇用調整助成金とは?

雇用調整助成金は、社会情勢の変化などの外部要因によって、生産量や営業活動などを減らす必要がある事業主を支援する制度です。

労働者を辞めさせず、雇い続けるための措置にかかる費用を助成します。新型コロナウイルス感染症で注目を浴びましたが、新型コロナの影響は必須要件ではありません。

どうやって使えば良い?

雇用調整助成金は、受注の減少などで仕事が減った場合に労働者を解雇せず、一時的に休業させる措置が対象となります。市場の変化に対応するための教育訓練を労働者に受けさせた場合や、雇用維持のためのグループ企業への出向なども支給対象です。

受給要件は?

雇用調整助成金の受給要件は、以下の3点がポイントです。

  1. 景気の変動などの経済上の理由
  2. 事業活動を縮小
  3. 労使協定(※1)に基づく雇用調整

雇用調整助成金は、景気の変動や産業の衰退など、外部要因が事業縮小のきっかけとなる必要があります。

季節の影響など毎年発生する出来事や、事故により設備が稼働できなくなった場合などは対象となりません。

なお、事業活動の縮小とは、以下の2点に該当する状況を指します。

  • 売上高や生産量など、事業活動に関する指標の3ヵ月平均値が、前年同期より10%以上減少していること
  • 労働者数の3ヵ月平均値の増加が、前年同期と比べて一定の範囲内であること(中小企業:10%超かつ4人以上、大企業:5%超かつ6人以上の増加がない)

1 : 事業場の労働組合か、労働者の過半数を代表する者と事業主が締結する協定

何に対して支給されるの?

支給対象となる措置

雇用調整助成金は、休業・教育訓練・出向に対して支給されます。主な内容は以下のとおりです。

・休業

対象となる1ヵ月間のうち、労働者が本来働く時間の1/20以上(大企業の場合は1/15以上)休業させ、労働基準法で定められた休業手当(平均賃金の6割以上)を労働者に支払った場合に対象となります。

教育訓練

職業に関係する知識や技術の習得を目的とした教育や訓練、講習などが対象です。事業場でおこなわれる場合と、事業場外でおこなわれる場合で要件が異なります。

出向

3ヵ月から1年の範囲の出向で、出向元として労働者の賃金を一部負担している場合に対象となります。出向は雇用調整を目的としたもので、人事交流などが目的の場合は対象になりません。

雇用調整助成金はいくらもらえるの?

雇用調整助成金はいくらもらえるの?

雇用調整助成金は、事業主がおこなった措置の内容や期間、事業の規模によってもらえる額が異なります。計算方法の概要と注意点を確認しましょう。

助成金の計算方法は?

雇用調整助成金は、休業などの措置をおこなった日数を、措置の対象になりえる労働者の人数で割った日数分だけ支給されます。

たとえば、対象者が10人の事業所で5人が6日ずつ休業した場合、以下のように計算します。

5人 ✕ 6日 / 10人 = 3日

1日あたり支給額の計算方法は、以下のとおりです。

1.休業・教育訓練

休業手当の額か教育訓練時の賃金相当額に、以下の助成率を乗じた額が支給されます。

休業・教育訓練表
2:支給対象となる日数に対する、教育訓練を実施した日数の割合

1人1日あたりの上限額は、雇用保険の基本手当日額の最高額です。令和7年度は8,635円が1人1日あたりの上限額になります。

2.出向

出向した労働者の賃金のうち、出向元事業主が負担した額(出向前の賃金のおよそ半額が上限)に、以下の助成率を乗じた額が支給されます。​

出向表

1人1日当たりの上限額は、雇用保険の基本手当日額の最高額(令和7年度は8,635円)に「330 / 365」を掛けた額になります。

出典:厚生労働省「雇用調整助成金

残業相殺って何?

残業相殺とは、休業期間中に労働者に残業や休日出勤をさせた場合の仕組みです。労働者に残業などをさせた場合、休業の必要が本来なかったものとみなされます。残業などが突発的・一時的なものの場合も同様です。

残業相殺では、残業や休日出勤をさせた時間を、助成対象となる休日などの延べ日数から控除したうえで雇用調整助成金の支給額を計算します。

【申請方法】雇用調整助成金の申請に必要な手続きは?

雇用調整助成金の申請に必要な手続き

雇用調整助成金の申請は、雇用調整の措置をおこなう前から準備が必要です。必要な書類も措置によって異なるため、抜けや漏れがないようしっかり確認しましょう。

申請の流れは?

雇用調整助成金の申請は、以下の流れでおこないます。

雇用調整助成金の申請の流れ
雇用調整助成金ガイドブック(令和7年4月1日現在版)」(厚生労働省)を加工して作成
  • 雇用調整の計画 : 休業や教育訓練、出向の計画を作成します。
  • 計画届の提出:雇用調整の措置をおこなう前に、労働局への届け出が必要です。
  • 雇用調整の実施 : 計画に基づき、支給対象となる措置をおこないます。
  • 支給申請 : 雇用調整の措置のあと、支給申請書に必要な書類を添付して労働局へ提出します。
  • 審査・支給決定 : 労働局に提出した書類の審査がおこなわれます。 審査に通れば支給決定です。
  • 助成金の受給 : 指定した口座に助成金が振り込まれます。

申請に必要な書類は?

申請に必要な書類を、表で確認しましょう。なお、表中の記号の意味は以下のとおりです。

: 毎回提出する書類(変更届含む)

初・失 : 初回に提出し、失効した場合も提出する書類

: 初回の提出のみの書類

1.計画届の必要書類

計画届の必要書類

2.支給申請の必要書類

支給申請の必要書類

このほか、協定書などの確認書類も添付が必要です。なお、提出した書類は申請から「5年間」保存しなければいけません。

不正受給を避けるには?

雇用調整助成金の不正受給を避けるには?

雇用調整助成金の申請では、不正受給に注意しなければいけません。最後に、不正受給を避けるためのポイントを確認しましょう。

不正受給をするとどうなるの?

雇用調整助成金を不正受給すると?
雇用調整助成金 不正・不適正に受給していませんか」(厚生労働省)を加工して作成

不正受給が発覚した場合、助成金の返還を求められます。加えて、年3%の延滞金と返還額の20%の合計額の納付が必要です。

さらに、悪質な場合には刑事告発されたり、事業所名などが公表されたりします。厳しく対応されるため、不正受給は絶対に避けましょう。

不正受給を避けるポイントは?

不正受給を避けるポイントは、以下のとおりです。

1.事実の確認

申請をおこない雇用調整助成金の支給を受けたものの、本来は支給対象外だった場合、意図的でなくても不正受給に該当する可能性があります。申請書類は要件をよく確認し、事実に沿って正確に作成しましょう。

2.記録の保管

休業や教育訓練をおこなった記録、賃金の記録などはきちんと保管してください。労働局の立入調査を受ける場合も、記録にもとづいて説明する必要があります。

3.専門家への相談

不明点はそのままにせず、労働局や社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。

まとめ

雇用調整助成金のまとめ

雇用調整助成金は、厳しい経営環境のなかでも「人」という最大の経営資源を守るための心強い味方です。正しく活用すれば、労働者の生活を守りながら企業の経営基盤を安定させることができるでしょう。

申請にあたっては要件と手続きを理解し、計画的に進めることが成功の鍵です。特に、不正受給は意図的でなくとも厳しいペナルティが課されるため注意が必要です。

どんなに厳しい経営環境でも、従業員との信頼関係を守り抜くことが長期的な成功につながります。雇用調整助成金は、人間関係を維持し共に再建への道を歩むための強い味方となるでしょう。

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