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この記事を監修した人

檜田 和毅
檜田 和毅
シェルパ税理士法人 パートナー 公認会計士・税理士・MBA(国際経営学)

四大監査法人の一つに勤務後、米国へのMBA留学を経て、2013年に参画、2016年の税理士法人立ち上げよりパートナー

上場準備会社のIPOプロジェクトの責任者として実際の上場まで従事した経験を持ち、国際税務やM&Aにかかる会計税務も専門とする。

先月、リー・クアンユーの“良い独裁”について少し言及しました。 

シンガポールの初代首相であるリー・クアンユーは、尊敬するリーダーの一人です。 

マレーシアの一部であったシンガポールは、方針の不一致や争いなどから、苦渋の決断として独立を選択します。首長として統合を望み尽力してきた、当時35歳であったリー・クアンユーは、望まぬ独立を報告する会見で、涙してしまいます。話すことができず一時会見を中断するほど、不本意な決断であったようです。 

国の独立は、命懸けで勝ち取り、その瞬間は歓喜に満ち溢れるものというイメージが強いです。 

ところが、この会見には悲壮感しかありません。 

極貧の資源ゼロ国家としてスタートすることを余儀なくされ、民族衝突が起こり、防衛力もなかった国を単独で統治することになり、その重責を思うと、本当に押し潰されそうだったのだろうと考えられます。 

この会見の光景は、今の豊かなシンガポールを考えると意外です。 

2024年の統計では、一人当たりGDPでは4位、世界中から金融機関が進出する国になっています。安全できれいで、それでいて税金が高いわけではありません。 

これらは優れたリーダーが、“良い独裁”によって実現したものだと思います。リー・クアンユーはマレーシア連邦時代を含めて31年間、首相としてシンガポールを率いました。 

「ワンマン社長」という言葉が、多くの場合ネガティブな意味で用いられますが、“良い独裁”はスピード感ある(関係各所へのお伺いを要しない)、方針のぶれない組織設計においては有効なこともあると思います。 

なお、リー・クアンユーがシンガポールという国を豊かな国に設計していく仮定で、日本のことも参考にしていたと言われています。国のリーダーや政治だけが原因ではないと思いますが、大きな差がついてしまったのではないかと感じます。 

会見の後半は国民への決意表明となります(冒頭でリンクを貼った動画は、全体の一部のみです)。国民に向けて、ミッション・ビジョンを伝えます。 

「恐れることはない。すべては今まで通り進む。我々は多民族国家を築く。これはマレー国家でも、中国国家でも、インド国家でもない。すべての人が平等であり、文化・宗教・言語を尊重する。」 

「私はもうマレーシア人とは言えない。だがシンガポール人として、共に団結しよう。」 

中華系としてマレー国家に拒否されてしまいましたが、リー・クアンユーはあくまで多民族国家を信じ、それを実現しました。 

「我々は生き残らねばならない。水も貿易も他国に頼っている。愚かに両方から敵対されるような立場には立てない。」 

資源も軍事力もない中で、貿易・教育・外資導入を国家戦略の中心に据えました。 

目指す方向を定め、現在地からの逆算で何をするべきかを示します。 

組織にとって大きな目標を設定し、それを一丸となって実現していくには、任期に縛られないリーダーが、思う存分に実現に向かって突っ走れる環境が大事なのかもしれません。 

ただし、リーダーの方針が必ずしも構成員の幸福に繋がっているわけではないため、方向性を間違えると不幸な結末を迎えてしまうリスクもあります。 

リーダーとしては信じて突き進むしかないわけですが、所々で立ち止まって振り返ってみる冷静さも必要なのかもしれません。 

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