従業員の人材育成、スキルアップに活用できる人材開発支援助成金とは?制度内容についてわかりやすく解説

事業者にとって、従業員の人材育成やスキルアップは事業を存続・成長させるために必要不可欠であり重要な課題です。

しかし、日々事業の遂行に追われている事業者にとって、人材育成への投資はハードルが高いのが現状です。そんな事業者を後押しするために設けられた制度が人材開発支援助成金です。

本助成金は、企業が従業員に対して職業能力開発や技能向上を目的とした研修や教育を実施する際に、その費用の一部を国が支援するもので、企業の人材育成や従業員の能力向上の推進を目的としています。従業員が自身の能力を最大限に発揮できるようになれば、自らの貢献を実感でき、モチベージョン、コミットメントが高まり、結果的に人的資本の価値を高め、最終的に企業価値の向上にもつながります。

本記事では、人材開発支援助成金の詳細や申請方法などについてわかりやすく解説していきます。

詳細や最新の情報につきましては、事業承継・引継ぎ補助金事務局のホームページをご確認ください。

リンク:人材開発支援助成金について

 

 

 

人材開発支援助成金とは

人材開発支援助成金は、企業が従業員の職業能力開発を行うために必要な研修や教育訓練に対する支援を目的とする助成金です。企業が従業員のスキルアップやキャリアアップを促進するための教育を実施する場合、その経費を一部助成することで、企業の負担を軽減し、従業員の能力向上を図ります。

この助成金は、特に中小企業を支援するために設けられており、企業の業種にかかわらず、従業員のスキル向上を目的とした教育訓練に幅広く対応しています。助成金の対象となる経費は、研修の実施にかかる講師料、教材費、会場費、交通費などです。また、助成金額や支給条件については、申請内容に基づき決定されます。

 

 

 

人材開発支援助成金の6つのコースについて

人材開発支援助成金には、異なる目的に応じた6つのコースが設けられています。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキング支援コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース

内容によって申請するコースが異なるため、まずはどのコースに当てはまるのかを確認することが大切です。以下に、それぞれのコースについて詳しく解説していきます。

 

人材育成支援コース

職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等が助成されるというものです。

3つの助成メニューから成り、メニューによって受給対象者や助成金額も異なります。

①人材育成訓練

職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を事業主もしくは事育業主団体等が実施する場合の助成メニューです。実施訓練時間が10時間以上で、OFF-JTにより実施される訓練が対象です。

②認定実習併用職業訓練

事前に厚生労働大臣の認定を受けた、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練である実習併用職業訓練(認定実習併用職業訓練)を実施し、ジョブ・カードによる職業能力の評価を実施した場合の助成メニューです。

③有期実習型訓練

正社員経験が少ない有期契約労働者等を対象に、正規雇用労働者等への転換を目指すOFF-JTと適格な指導者の指導の下で行うOJTを組み合わせて実施する助成メニューです。正社員の経験が少なく、これまでの職業生活で職業能力の形成機会に恵まれなかった人など、「有期実習型訓練を受講する必要がある」と認められた有期契約労働者等のみが対象となります。

①~③のいずれもeラーニング・通信制により実施することが可能です。ただし、eラーニング・通信制により実施される訓練は、対面により実施される訓練とは支給要件上異なる取扱いをしており、各訓練メニューの要件に加え、以下の要件を満たす必要があります。

  • 事業外訓練として実施するものであること
  • 1訓練あたりの経費が分からない定額制サービスによるものではないこと
  • 広く国民の職業に必要な知識及び技能の習得を図ることを目的としたものであり、特定の事業主に対して提供することを目的としたものではないこと
  • eラーニング又は通信制によるOFF-JTを、在宅またはサテライトオフィス等において実施する場合は、テレワーク勤務の制度を、労働協約又は就業規則等で定めていること

また、①~③はそれぞれ支給対象者の条件や助成金の補助率、補助額などが異なるためよく確認して申請することが大切です。

リンク:人材育成支援コース

 

教育訓練休暇等付与コース

有給教育訓練休暇制度を導入している場合に利用できるのが、教育訓練休暇等付与コースです。対象の労働者が、実際に制度を利用して資格取得などを行った場合に申請できます。3年間に5日以上の取得が可能な有給の教育訓練休暇を導入し、実際に適用した事業主に助成されます。支給額は1事業主あたり30万円で、賃金要件又は資格等手当要件を満たす場合は6万円加算されます。

リンク:教育訓練休暇等付与コース

 

人への投資促進コース

人への投資促進コースは、「人への投資」を加速化するため、令和4年~8年度の期間限定助成として、国民の声を形にした訓練コースです。次の5つの訓練が用意されています。

①高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練

高度デジタル人材の育成のための訓練や、海外を含む大学院での訓練を行う事業主に対する高率助成メニューです。

②情報技術分野認定実習併用職業訓練

IT分野未経験者の即戦力化のための訓練(OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練)を実施する事業主に対する助成メニューです。

③長期教育訓練休暇等制度

働きながら訓練を受講するための長期休暇制度や短時間勤務等制度(所定労働時間の短縮及び所定外労働時間の免除)を導入する事業主への助成の拡充(長期休暇制度の賃金助成の人数制限の撤廃等)のためのメニューです。

④自発的職業能力開発訓練

労働者が自発的に受講した訓練費用を負担する事業主に対する助成メニューです。

⑤定額制訓練

労働者の多様な訓練の選択・実施を可能とする「定額制訓練」(サブスクリプション型の研修サービス)を利用する事業主に対する助成メニューです。

また、①~⑤はそれぞれ支給対象者の条件や助成金の補助率、補助額などが異なるためよく確認して申請することが大切です。

リンク:人への投資促進コース

 

事業展開等リスキング支援コース

事業展開等リスキリング支援コースは、令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設されました。

新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、事業主が雇用する労働者に対して新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。例えばシステムのデジタル化や環境保全など、事業拡大や社会の変化に伴い、必要な知識を得るための訓練に申請できます。

リンク:事業展開等リスキリング支援コース

 

建設労働者認定訓練コース

認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練を実施したり、建設労働者に有給で認定訓練を受講させたりした場合の訓練期間中の賃金の一部が助成されるコースです。

リンク:建設労働者認定訓練コース

 

 

 

人材開発支援助成金の活用事例

ここでは、人材開発支援助成金の具体的な活用事例についてご紹介します。

 

事例①:試験対策講座の受講費・試験受験料の助成

業種情報通信業
事業内容(従業員数)web・システム開発・ネットワーク構築(20名)
活用背景組織力強化のため、高度なデジタル分野の資格を持った核となる人材を育てることが課題であったが、計画的な業務命令ではなく個人任せにしていたため、今までは受験に繋がっていなかった。そこで、企業の組織力強化のため高度なデジタル分野の資格取得を目指すこととなった。
訓練内容外部教育訓練機関によるプロジェクトマネージャ試験対策講座を受講し、プロジェクトマネージャの資格取得を目指すというもの。
訓練期間・金額1人あたり30時間/1人あたり200,000円+試験受験料80,000円
助成金のコース人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練)
助成率・額<OFF-JT>経費助成 75%・賃金助成 960円/h
支給総額238,800円

事例②:営業職向けeラーニング研修費の助成

業種製造業
事業内容(従業員数)自動車部品製造(130名)
活用背景今までは個々の従業員にあった訓練をそれぞれ実施していたが、個々の従業員にあった訓練を探す手間がかかり、個別の訓練費用が高額であるため、訓練の機会を減らさざるを得ない状態となっていた。そこで、費用の削減のためにサブスクリプション型の訓練を実施することとした。
訓練内容外部教育訓練機関によるeラーニング講座を受講し、新入社員から管理職までの幅広い層での営業力向上を目指すというもの。
訓練期間・金額1か月3.5万円×12月
助成金のコース人への投資促進コース(定額制訓練)
助成率・額<OFF-JT>経費助成 60%
支給総額252,000円

事例③:スキルアップのためのセミナー受講費の助成

業種サービス業(税理士法人)
事業内容(従業員数)税務・会計・財務業務(8名)
活用背景個々の従業員が担当する企業によって求められる知識やスキルが異なるため、一律的な研修の実施が難しく、また従業員が自発的な学びを必要と感じながらも、なかなか集中的に学習に充てる時間の確保が難しいという状況であった。そこで、自発的にスキルアップに取り組める機会の確保ができる制度の導入をすることとなった。
訓練内容教育訓練機関によるスキルアップに必要となる様々なコースを受講し、顧客とのコミュニケーション強化を目指すというもの。
訓練期間・金額5日間
助成金のコース教育訓練休暇等付与コース(教育訓練休暇制度)
支給総額300,000円

リンク:活用事例1活用事例2

 

 

まとめ

いかがでしたか?

本記事では人材開発支援助成金について概要やポイントなどについて解説してきました。

本助成金は、事業者が従業員の能力を高めるための非常に重要な支援を得られる制度です。従業員のスキルアップを効率よく行いたいと考えている事業者は、ぜひ申請をご検討ください。また、本助成金は頻繁に改正されているため、最新情報は公式HPなどでこまめにチェックするようにしてください。

どのコースを選択すれば良いかわからない、やりたい研修が助成対象かどうかわからない等、申請に迷われた際は、ぜひビジネス・カタリストをはじめとしたシェルパグループにお気軽にお声がけください。

本記事が人材開発支援助成金の理解を深めるうえでお役に立てますと幸いです。

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