ものづくり補助金は、働き方改革や社会保険の適用拡大といった制度変更に対応するための、生産性向上や賃上げの取り組みを支援する補助金です。
令和6年度補正予算で、ものづくり補助金の概要が公表されました。基本要件の見直しや新しい特例の創設など、前年度と比較して大幅な改正点もあります。今回はものづくり補助金の申請方法やスケジュール、変更点についてご紹介します。
【2025年度】ものづくり補助金とは?

ものづくり補助金は、働き方改革などの制度変更に対応する取り組みを支援する中小企業生産性革命推進事業の補助金です。正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。
主に中小企業や小規模事業者向けの制度で、生産性向上や持続的な賃上げのための新製品・新サービスの開発に必要な設備投資等の支援を目的としています。
「ものづくり補助金」の略称から勘違いされがちですが、新サービスの開発も対象としており、製造業に限定した補助金ではありません。
ものづくり補助金には、製品・サービス高付加価値化枠とグローバル枠の2種類があります。
製品・サービス高付加価値化枠 | グローバル枠 | |
---|---|---|
概要 | 新製品・新サービス開発による高付加価値化 | 海外事業の実施による国内の生産性向上 |
補助上限額 | 5人以下 750万円 6〜20人 1,000万円 21〜50人 1,500万円 51人以上 2,500万円 | 3,000万円 |
補助率 | 中小企業 1/2 小規模・再生事業者 2/3 | 中小企業 1/2 小規模 2/3 |
製品・サービス高付加価値化枠は、価値提供のための新しい製品やサービスの開発に必要な設備・システム投資などに対する支援です。新しい製品やサービス開発が必須で、単なる設備投資などは該当しません。
また、同規模の中小企業や小規模事業者ですでに普及している製品・サービスも対象外です。機械装置やシステム構築の費用、技術導入費や専門家の経費、クラウドサービスの費用などが対象となります。
グローバル枠は海外への投資、海外市場開拓などの海外事業をおこない、国内の生産性を高める取り組みを目的とした設備・システム投資などに対する支援です。
対象となる経費は製品・サービス高付加価値化枠と基本的に同じですが、海外市場開拓に関する事業の場合、海外旅費や通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費も含まれます。
【2025年度】ものづくり補助金の手続き・スケジュール

申請の流れは?
申請は、以下の流れでおこないます。

なお、これまでの公募は、以下のスケジュールでおこなわれています。

事前準備として、GビズIDを取得します。GビズIDは行政への申請・届け出を電子でおこなうときに必要な認証システムです。アカウントの発行まで、2週間ほどかかります。
なお、GビズIDプライムは、2つの申請方法があります。詳細は、デジタル庁「GビズID」をご確認ください。

続いて、公募のための事業計画書の策定や必要書類を準備します。事業計画書は下記の基本要件を満たさなければいけません。事業計画書の実施期間は3〜5年です。

※2 共通要件に追加となる要件、共通要件と①〜④のいずれかを満たすこと
事業計画書ができたら、他の提出書類をそろえましょう。以下の書類が必要です。
【全事業者】
- 基本情報
- 事業計画書
- 補助経費に関する誓約書
- 賃金引上げ計画の誓約書
- 決算書等
- 従業員数の確認資料
【該当する場合のみ】
- 次世代法一般事業主行動計画公表の確認
- 再生事業者に係る確認書
- 大幅な賃上げ特例に係る計画書
- 最低賃金引上げ特例に係る状況の確認資料
- 資金調達に係る確認書
- 海外事業の準備状況を示す資料
- 加点関係資料
必要書類がそろったら「電子申請システム」で提出します。電子申請システムのページにマニュアルが掲載されているので、必ず参照して入力の誤りや書類の提出漏れがないようにしましょう。
申請後、事務局と外部有識者による書類審査、外部有識者による口頭審査がおこなわれます。審査を通過したら交付候補者として採択され、交付の申請が可能になります。交付の申請は、交付候補者決定日から2ヵ月以内におこなう必要があるので注意しましょう。
事業の進捗が事業計画書より遅れている場合、採択が取り消しになることがあります。申請がとおり、交付が決定したら、補助事業を実施しましょう。実施期間は枠の種類に応じて、以下のいずれか早い方までです。
製品・サービス高付加価値化枠 | グローバル枠 | |
交付決定日から | 10ヵ月間 | 12ヵ月後 |
採択発表日から | 12ヵ月後 | 14ヵ月後 |
補助事業の完了後、実績報告をすると確定審査がおこなわれます。補助金の額が確定するため、補助金を請求しましょう。補助金を受け取ったあとは、事業化の状況報告が必要です。
スケジュールは?
2025年最初の公募である第19回公募要領が2月14日に発表されました。スケジュールは以下のとおりです。
申請開始日 | 2025年4月11日(金) 17時 |
申請締切日 | 2025年4月25日(金) 17時 |
採択公表 | 2025年7月下旬頃予定 |
20次以降の公募スケジュールは、現段階では未定です。参考までに、過去のスケジュールを再掲します。

【2025年度】ものづくり補助金の変更点

変更内容は?
2025年度のものづくり補助金は、昨年度から大きな変更がありました。一番の変更点は、基本要件の見直しです。省力化(オーダーメイド)枠が廃止され、製品・サービス高付加価値化枠は2種類あった類型が削除となり、1つに統合されました。
また、賃金の増加要件にも変更があります。従来のものづくり補助金では給与支給総額の年平均成長率が+1.5%以上が条件だったところ、今回から+2.0%以上に引き上げられ、厳しくなりました。
さらに、製品・サービス高付加価値化枠の従業員規模区分が下記のとおり見直されています。
人数 | 2025年度 | 2024年度(通常類型) |
---|---|---|
5人以下 | 750万円 | 750万 |
6〜20人 | 1,000万円 | 1,000万 |
21〜50人 | 1,500万円 | 1,250万 |
51人以上 | 2,500万円 | 1,250万 |
これに伴い、補助金上限額が一部拡充されました。
最低賃金引き上げ特例とは?
最低賃金引き上げ特例は、中小企業向けに新たに創設された特例です。
第19次公募の場合、2023年10月から2024年9月までの1年間で3ヵ月以上、地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員の30%以上いる場合に対象となります。
なお、最低賃金引き上げ特例が適用された場合、補助率が1/2から2/3へ引き上げられます。
まとめ

本記事では、2025年度のものづくり補助金について解説しました。
ものづくり補助金は新製品・新サービスの開発を支援する補助金です。基本要件が細かく決まっており、要件を満たさない場合は補助金の返還が必要な場合もあるため注意しましょう。
第19次公募は、4月11日から申請が開始されます。基本要件の見直しや最低賃金引き上げ特例の創設など昨年度から大幅な変更もあるため、申請時には公募要領を十分に確認しましょう。
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