海外赴任時は保険をどうすればいいのか
海外から来日して勤務している方々が日本の社会保険に加入する義務があるのと同様に、日本から海外に赴任した社員の方々も現地の社会保険に加入する義務がある場合が多いです。香港のように公的な健康保険制度がそもそもない国や、シンガポールのように社会保険制度はあるものの国民や永住権保有者のみに加入義務がある国などでは海外赴任者は現地における社会保険の加入義務を心配する必要はありませんが、そのような国はレアケースという印象です。
海外赴任後の年金への影響
海外に赴任した結果として日本において社会保険の天引きがなくなり、厚生年金を払わなくなった場合には、当然に将来受け取ることの出来る年金の額に影響してしまいます。また単身赴任で海外に行く場合には、日本において健康保険を払えず、保険証を喪失してしまう可能性もあります。
日本の厚生年金は日本において給与を受ける場合に加入することが出来るため、給与の全額を海外で受け取らずに日本でも一部を受け取り、あえて日本の社会保険に加入したままにすることも考えられます。給与支払いの日本と海外の比率を決める際には、社会保険に対する社員の希望もヒアリングした上で調整する必要性も留意するべきと考えられます。
社会保険協定
ただし、日本が社会保障協定を締結している国に赴任する場合には、日本で給与を受け取ってあえて日本の社会保険に加入しなくとも、海外で支払った年金を日本の年金制度の期間算定上通算させることができます。すなわち、日本で社会保険の支払をせずに赴任先の国のみにおいて社会保険の支払をしていたとしても、日本において将来受け取れる年金が減額されてしまうことがないということになります。
しかしながら、日本が社会保障協定を締結している国は、2019年7月時点においてまだ22カ国に留まっており、発行しているのは19カ国のみになります(https://www.nenkin.go.jp/service/kaigaikyoju/shaho-kyotei/kyotei-gaiyou/20141125.html)。アジアで見ると、日本が社会保険協定に署名しているのはインド、韓国と中国のみであり、発行しているのはインドと韓国のみになります。東南アジアの海外進出先として多く見られる、シンガポールやインドネシア、ベトナムやタイなどは含まれていないため、これらの国に海外赴任させる際には、年金に対する社員のスタンスをよく確認する必要があります。
海外赴任者の賃金設計への影響
日本において諸税や社会保険等を天引きした後の手取り額を赴任中も補償する形での賃金設計をしている場合に、日本と赴任先の国の双方で社会保険を支払うこととなった場合の手取り額補償の考え方としては、やはり日本における社会保険を控除した後の手取り額を補償する賃金設計が一般的だと考えます。社会保険料が給与の額に応じて課されることを鑑みると、給与の額がよほど高くない限りは日本と赴任先の国での二重課税のような現象は考えづらく、料率の違いこそあれど、結局どちらで払ってもトータルでの社会保険料の額に大きな差は無いと考えられるからです。
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