そもそも補助金とは何か?制度背景と基礎知識についてわかりやすく解説

この記事を監修した人

榊原 聡
榊原 聡ビジネス・カタリスト株式会社 代表取締役
株式会社きらぼし銀行(当時株式会社八千代銀行)へ入行。
一環して融資審査業務に従事し、2018年に税理士法人ヒダ(現シェルパ税理士法人)へ入社。
2020年にビジネス・カタリスト株式会社の立ち上げに関与し、2021年より現職。
銀行業務で培った融資支援・財務コンサルティングを専門とし、その他補助金・助成金支援業務にも携わる。

新たな事業への挑戦や既存事業の強化を考える中小企業経営者にとって、「補助金」は非常に魅力的な制度です。
しかし、「制度の仕組みが複雑でわかりにくい」「どの補助金が自社に合っているのかが分からない」という声も多く聞かれます。本記事では、“補助金とは何か”という基本から、制度が生まれた背景、そして近年の不正事例、さらに活用のポイントまで、わかりやすく解説していきます。 

補助金とは

補助金とは、国や自治体などの公的機関が、中小企業や個人事業主の特定の事業に対して支援するために、返済不要の資金を交付する制度です。対象となる事業には、新規事業の立ち上げ、設備投資、IT化、販路拡大、雇用創出、地域活性化など多岐にわたります。
さらに、補助金には以下のような特徴があります。 

  • 返還期限がない(ただし、条件不履行の場合は返還義務あり) 
  • 募集期間(公募期間)や事業実施期間が定められている 
  • 審査を通過する必要がある 
  • 採択されなければ受給できない
  • 交付決定後でなければ補助事業を実施できない
  • 申請から受給まで一定期間が必要 

代表的な補助金制度には「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」などがあり、それぞれ目的や対象事業者、補助内容が異なります。 
補助金公募の最新情報は、中小企業庁のホームページに随時アップされるため、こまめにチェックしておくと良いでしょう。 
(リンク:補助金活用ナビ|中小企業庁) 

参考: https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241021/k10014615211000.html https://www.yomiuri.co.jp/national/20250624-OYT1T50041/ 

補助金制度制定の背景

補助金制度の背景

補助金制度は、単なる経済支援にとどまらず、政府の経済政策や地域振興政策、産業構造改革の一環として位置づけられています。以下のような目的で制度が設けられています。 

  • 経済の活性化:中小企業の成長を促すことで、国内経済の底上げを図る 
  • 雇用の創出と維持:新事業に伴う雇用機会を創出し、地域社会の安定化に寄与する 
  • イノベーションの促進:研究開発やデジタル化などの先進的な取り組みを支援することで、日本全体の競争力を強化する 
  • 地域の均衡発展:過疎地域や被災地など、特定地域への重点的な支援を通じて格差を是正する 

こうした背景を踏まえ、補助金制度は毎年度、国の予算案に基づき編成・運用されています。 

補助事業とは

補助金の交付対象となる事業は「補助事業」と呼ばれます。補助事業とは、申請者が補助金の交付を受けて実施する活動全般を指します。事業者は、自らの負担で補助事業を遂行し、その成果について所定の報告義務を果たす必要があります。 補助金は実績報告の後に入金となるため、補助金をあてにした事業遂行はできません。 
補助事業の実施にあたっての一般的な流れは、以下の通りです。

  • 公募開始:補助金の募集が始まる
  • 申請:事業計画書、見積書、財務資料などを提出(オンライン申請が一般的) 
  • 審査:書類審査・面談・加点評価などが行われる 
  • 採択通知:交付決定
  • 事業実施:期間内に事業を完了し、経費を支出
  • 実績報告:領収書や報告書を提出し、支出の正当性を証明 
  • 補助金交付:補助事業完了報告の審審査後に補助金が支給される 
  • 実施後報告:補助金受給後、定期的な報告やフォローアップを受ける 

補助金は「申請して終わり」「着金して終わり」ではありません。申請から実績報告、その後のフォローまで、すべてのスケジュールを加味して計画を立てるようにしましょう。 

補助金をめぐる問題

補助金をめぐる問題

補助金制度は、適正な手続きを前提とした公的資金の交付であるため、不正受給が発覚すると重大な問題となります。近年では、以下のような不正事例が報道されています。 

  • 架空の事業計画で補助金を申請 
  • 補助対象外の経費を水増し請求 
  • 実態のない取引で経費を偽装 
  • 採択後、事業を実施せずに補助金だけを受け取る

こうした不正に対しては、補助金の返還請求にとどまらず、刑事告発や企業名の公表、関係機関への通報など厳しい措置が取られています。また、不正に関与した中小企業診断士や税理士が登録取り消し処分を受ける事例もあり、関係者にとっても大きなリスクとなります。 

近年、特にコロナ禍において補助金や助成金の不正受給が相次ぎ、大きな問題となっています。 

以下は、実際に起きた事案の詳細です。 

実際に起きた事案①:IT導入補助金の不正受給

2024年10月に報道されたこの事案では、システムを納入した事業者からITベンダーへ資金がキックバックされ、このうち約1/4の補助金が不正受給にあたることが発覚したというものです。会計検査院は、これらの合計約58億円にもなる補助金の不正受給ついて、追加調査を行って速やかに返還させるよう中小企業庁に求めました。“管理・監督”の立場となるベンダーが企業に不正受給など働きかけていたという事実は衝撃的なニュースとして報道され、大きな社会問題となりました。 

実際に起きた事案②:持続化補助金(コロナ型)の不正受給

2025年6月に報道されたこの事案では、コンサルティング会社の男3人が逮捕されました。容疑者らは、交流イベント参加者50人以上に対し「国の補助金がもらえる」などと持ちかけ、「ウェブサイトの制作」「換気用機器の導入」といった虚偽の計画書を作成・申請し、不正に補助金を受給したとされています。詐取した金額は8500万円以上とも言われ、大きく報道されました。 

このような事案を受けて、中小企業庁は「補助事業を執行している中小企業基盤整備機構に対し、審査の厳格化や立入検査の強化などを確実に実施し、再発防止策をとるよう指導や助言をしていく」としています。 

事業者側も「知らなかった」「認識が甘かった」では済まされません。制度を正しく理解し、適正に活用することが求められるのです。 

補助金を上手に活用するためのポイント

補助金を上手に活用するためのポイント

補助金を有効に活用するために、押さえるべきポイントを以下に解説していきます。 

公募要領をしっかりと読み込む

文章量が多いため、スキップしてしまう事業者も多いですが、とにかくまずは公募要領をしっかりと読み込んで、補助金への理解を深めることが大切です。 

事前準備をしっかりと行う

事業計画や資金計画、実施体制を明確にしておくことが大切です。また、補助金の公式サイトや中小企業庁の公募結果などを参考に、自社と同じ業種・規模の成功事例を把握することで、採択されやすい計画の傾向を把握できます。国の政策やトレンド(例:脱炭素、DX、働き方改革など)を盛り込むと採択されやすいと言われているため、これらについても調査し、採択されやすい補助事業を選択すると良いでしょう。 

事業計画は自分で立てる

補助金申請の際、悪質なコンサルタントや業者に書類作成を丸投げで依頼しないよう注意してください。補助金事務局は補助金申請終了後、事業者が内容を理解した上で書類を作成したかどうか、認定支援機関に聞き取り調査を行うことがあります。最悪の場合、今後の補助金申請の採択結果にも影響を及ぼすため、事業計画は必ず事業者自身が立て、計画書の内容も正確に把握した上で認定支援機関の認定を受けるようにしましょう。 

事業計画書を綿密に書き込む

申請書は「採点される文書」であると意識するようにしましょう。補助金の審査は、基本的に定量・定性両面の加点評価方式で行われます。定量データの根拠や市場分析、実行体制の明確さなど、審査員に伝わりやすい書き方を意識しましょう。図や表を用いて、資料として見やすい工夫をすることも大切です。書き方に迷った際は、認定支援機関の窓口や信頼のおける税理士や中小企業診断士などに相談しながら申請書を作成するようにしましょう。 

申請準備は早めに行う

公募期間内に書類を整えるため、申請書類等の作成は早めに行いましょう。認定支援機関等の窓口は締め切りに向けて混雑していくので、早めに書類を完成することが大切です。また、電子申請のために取得が必須であるGビズIDは発行まで2週間前後かかることもあるため、こちらも早めに申請するようにしてください。 

自己資金を確保しておく

補助金は後払いが原則であるため、資金繰りに注意しましょう。あらかじめ金融機関に融資を打診するなど、キャッシュフローに影響が出ないよう資金計画を練っておくことが大切です。 

こうした点を踏まえ、補助金は「もらえるもの」ではなく「競争の中で勝ち取る支援制度」であることを意識し、準備を重ねることが事業成功のカギとなります。 

まとめ

補助金とは?まとめ

いかがでしたか? 

本記事では、「補助金とは何か」について、制度の基本から背景、実務上の注意点、不正事例、活用のポイントまでを幅広く解説しました。 

まとめると、 

  • 補助金は返済不要の公的支援であり、中小企業や小規模事業者にとって大きなチャンスとなる 
  • 制度の背景には、国の経済政策や地域振興、イノベーション支援などの意図がある
  • 補助事業の遂行には厳格なルールと報告義務が伴い、不正行為には厳しい制裁がある 
  • 採択されるためには、事前準備、計画性、テーマ設定、専門家の協力、資金繰りなどの準備が不可欠 

制度を正しく理解し、適切に活用することで、補助金は企業の未来を切り開く有力なツールになります。 

補助金全般の申請枠や事業計画作成に迷われた際は、ぜひビジネス・カタリストをはじめとしたシェルパグループにお気軽にお声がけください。 

本記事が補助金についての理解を深めるうえでお役に立てますと幸いです。 

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