理想的な持株比率とは?おさえておきたい「比率ごとの権利」を徹底解説!

事業を拡大するために、出資者を募ろうと考える方は少なくないでしょう。

出資者を増やせば資本金は増えますが、創業者の持株比率は下がるため、持株比率の低下が引き起こすリスクをおさえておく必要があります。

この記事では、持株比率に応じた株主の権利や最適な持株比率について、わかりやすく解説します。

 

 

 

持株とは?

ここでは、持株の概要や目的、株主の権利など具体的に解説します。

 

そもそも「持株」ってなに?

「持株」とは、所有している企業の株式のことです。株式を所有することで、配当金を受け取ったり経営に参加したりするなど、さまざまなメリットがあります。

ただし、株式を購入するために支払ったお金は企業の資金となり返済義務がないため、戻ってこない可能性があります。この点には注意が必要です。

 

株主の権利ってなにがあるの?

持株の所有者を「株主」といい、以下のような権利を有します。

  • 議決権
  • 利益配当請求権
  • 残余財産分配請求権

 

議決権

「議決権」とは、株主総会へ参加して議案に投票できる権利です。

原則として、1単元株につき1つの議決権をもつため、株式を多く所有している株主ほど、経営に対して強い影響力をもっています。

 

利益配当請求権

「利益配当請求権」は「剰余金配当請求権」などとも呼ばれ、企業が得た利益から配当金などを受け取ることができる権利です。

 

残余財産分配請求権

「残余財産分配請求権」とは、まず残った財産は負債に充てられます。それでもなお財産が残った場合には、株主に分配されます。株主は保有する株式数に応じて、この財産を受け取ることができます。

このように、株主は企業の出資者として利益を受け取ったり経営に参画したりする権利を持つのです。

 

 

 

持株比率とは?

ここでは、持株比率の概要や計算方法、比率による経営への影響力の違いなどを具体的に解説します。

 

持株比率ってなに?

「持株比率」とは、企業が発行した株式に総数のうち、自身が保有する株式の割合のことです。

持株比率により、株主として権利の大きさが変わります。比率が高いほど、経営への影響力が強くなります。

 

持株比率の計算方法は?

持株比率の計算は、以下のようにおこないます。

自身の保有株式が少ない場合でも、企業が発行した株式が少ない場合には保有率が高くなります。

 

持株比率が低いとどうなる?

持株比率が低いと、経営への影響力が弱まります。

創業者が事業資金を調達するために株式を大量に発行し、出資者や共同経営者の持株率が高くなると、自身の持株比率が下がり、株主総会での議決がとおらないことがあります。

このような状況になると、自分の会社でありながら経営方針を決定できなくなる可能性があります。経営者は、こうした事態を避けるために、持株比率に十分な注意が必要です。

 

 

 

持株比率と議決権比率の違いは?

株主は、株主総会へ参加できますが、議案を可決できるかは「議決権比率」によって決まります。ここでは、議決権比率の役割や特殊比率との違いについて、わかりやすく解説します。

 

議決権比率ってなに?

「議決権比率」とは、総議決権数に対する議決権の割合を指します。

議決権は、原則として「1株につき1つ」です。そのため、通常は議決権比率と持株比率は一致します。

議決権のない株式が発行されている場合などは、これらの比率は一致しませんが、この記事ではわかりやすく説明するために、発行されている株式は「すべて議決権がある」という前提で解説します。

 

持株比率と議決権比率の違いはなに?

先ほど解説したように、「持株比率」は企業が発行した株式の総数における自身が保有している株式の割合です。また、「議決権比率」は議決権の割合を指します。

つまり、議決権割合は、株主総会で議案を審議する際の影響力の強さを示したものです。

 

 

 

持株比率ごとの権利の違いは?

持株比率によって、持株の呼び方や権利が変わります。

 

持株比率で株主の呼び方は変わる

持株比率が高い株主を「大株主」と呼びます。

大株主に明確な定義はありませんが、高い持株比率の株主は、以下のようによばれています。

呼称持株比率
主要株主持株比率10%以上
筆頭株主所有している株式が最も多い株主

なお、上場企業の場合、大株主は株価の動きに大きく影響を与える可能性があります。そのため、企業は、持株比率が5%以上ある株主を内閣総理大臣へ届け出なくてはなりません。

非上場企業については、持株比率が5%以上ある株主を届け出る必要はありませんが、会社法で株主名簿の作成が義務付けられています。

そのため、名簿で誰がどれだけ所有しているかを管理しておくとよいでしょう。

 

持株比率で株主にできることが変わる

持株数や持株比率により、株主が行使できる権利は変わります。

持株比率が100%であれば、すべてのことを自分一人で決めることができますが、それ以外の場合には、ほかの株主の意見も考慮する必要があります。

 

 

理想の持株比率は?

理想の持株比率は、企業や状況によって異なります。

一般的には、安定した経営を重視する場合持株比率を高めに設定します。一方で、リスクを取って資本を確保したい場合は、持株比率がより低くなるでしょう。

同じ目標を持つ仲間同士が共同で事業を始めることはよくありますが、事業運営中に意見の対立が生じて仲違いする例も少なくありません。

この場合、持株比率が50:50だと、意思決定が困難になるだけでなく、決算の承認すらできないため、事業の継続が脅かされることがあります

そのため、持株比率は様々なリスクや問題を考慮し、専門家の助言も聞きながら慎重に決定することが重要です。

 

 

 

創業者の持株比率はどうやって上げる?

経営の安定化のために創業者の持株比率を上げる場合は、次のような方法があります。

  • 株式の発行
  • ほかの株式から買い取る

 

株式の発行

新規に株式を発行し創業者が購入することで、創業者の持株比率を上げることが可能です。

この方法は、新たに株式を購入する費用が必要になるうえ、株式の発行にほかの株主が賛成せず株主総会で否決されてしまう可能性がある点に注意が必要です。

 

ほかの株主から買い取る

ほかの株主から株式を買い取ることで、創業者の持株比率を上げることができます。

この方法も、株式の買い取り費用が必要です。また、通常「株式譲渡制限」があるため、株主総会や取締役会など会社で決めた機関の承認がないと譲渡してもらえません。

たとえ売り主の株主の同意があっても、買い取ることができないことがあるため注意しましょう。

このように、どちらの方法も株式の購入費用がかかるうえ、ほかの株主などの同意がないと実現できません。一度下がってしまった持株比率を上げることは、非常に困難です。持株比率が下がりすぎないよう、しっかりと管理しましょう

 

 

まとめ

この記事では、比率に応じた株主の権利の変化や理想的な持株比率、持株比率を上げる方法について解説しました。

資金調達の手段として株式を新規に発行した場合には、結果的に創業者の持株比率が下がることがあるため注意が必要です。

創業者の持株比率が高いほど安定した経営がおこなえますが、理想的な持株比率は企業や状況によって異なります。経営の安定性と事業拡大のバランスを考慮し、専門家と相談しながら最適な比率の検討をおこないましょう。

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