令和6年度税制改正で住宅取得等資金の「贈与税非課税制度」が3年間延長!制度のポイントや注意点についてわかりやすく解説!

令和6年度の税制改正で、住宅取得等資金の「贈与税非課税制度」が3年間延長されました。

贈与税は高額になるケースがあるため、節税のポイントをおさえておきたい方は少なくないでしょう。

この記事では、贈与税非課税制度について詳しく解説します。また、制度のポイントや注意点についてもわかりやすく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

【税制改正】贈与税非課税制度が令和8年12月31日まで延長


税制改正により、令和6住宅取得等資金の贈与税非課税制度が「令和6年1月1日から令和8年12月31日まで」の3年間延長されました。また、制度の要件についても一部変更されています。

 

 

住宅取得等資金の「贈与税非課税制度」とは


贈与税非課税制度とは、直系尊属から住宅取得等資金として受贈した金額にかかる贈与税のうち、限度額まで非課税となる制度です。

制度を受けるには適用条件があり、非課税となる金額が決まっています。

 

贈与税とは

贈与税とは、個人から贈与を受けた際にかかる税金です。贈与税は、1年間で受けた贈与が基礎控除額の110万円を超えた場合に税金が発生します。

なお、贈与税については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
税制改正で相続税・贈与税はどう変わる?相続時精算課税と暦年贈与の概要とポイントを解説!

 

贈与税非課税制度の適用条件

贈与税の非課税制度には、適用条件があります。はじめに、「受贈者の要件」と「住宅の要件」についてご紹介します。

 

受贈者の要件

受贈者の要件は以下のとおりです。

  • ● 贈与を受けた年の1月1日に受贈者の年齢が18歳以上であること
    ● 贈与を受ける方は贈与者の直系卑属(子や孫)であること
    ● 贈与を受けた年の所得税にかかる合計所得の金額が2,000万円以下(1,000万円以下のケースもある)であること
    ● 贈与税の申告で平成21年分から令和3年分までのあいだに「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けていないこと(一定の場合を除く)
    ● 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住するか、同日後に遅れることなく確実に居住する見込みがあること

なお、年齢や所得の金額、期日などについては「贈与税非課税制度のポイント」や「贈与税非課税制度の注意点」の項で解説します。

 

住宅の要件

住宅の要件には「新築または家屋を取得した場合」と「増改築などの場合」があり、どちらのケースも以下の要件は同じです。

  • ● 日本の国内で建てられた家屋に限ること
    ● 建物の敷地に使われる土地などの取得も含まれること
    ● 建物の登記簿上の床面積が40㎡以上かつ240㎡以下であり、さらに床面積の2分の1以上に受贈者の居住の用に供されるものであること

 

上記のほか「新築または家屋を取得した場合」では、以下の要件があります。

  • ● 建築後に使われたことがない住宅用の家屋であること
    ● 建築後に使われたことのある住宅用の家屋で
    ①地震に対して安全性の基準が適合するものであること(一定の書類により証明されたもの)
    ②昭和57年1月1日以後に建築されたもの
    ③ ①②に該当しない場合に一定の申請書等に基づき耐震改修を行い、贈与を受けた翌年3月15日までに耐震基準に適合することとなったことの証明がされたもの

 

また「増改築などの場合」では、以下の要件がありますのでおさえておきましょう。

  • ● 工事費用の額が100万円以上であること
    ● 自己の居住に使われる部分の工事費用の額が2分の1以上あること
    ● 受贈者の所有で、さらに居住している家屋に対した増改築の工事が、確認済証や検査済証の写し、または増改築等工事証明書などの書類により証明されていること

 

なお、贈与税非課税制度は内容が複雑であり、適用条件は上記のほかにもあります。詳しくは、国税庁のHP「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」や「租税特別措置法施行令」をご参照ください。

 

非課税になる金額は最大で1,000万円

非課税になる金額は、「省エネ等住宅」の場合で最大「1,000万円まで」です。なお、省エネ等住宅に該当しない住宅は「500万円まで」非課税となります。

省エネ等住宅該当しない住宅
1,000万円 500万円

 

省エネ等住宅とは

省エネ等住宅とは、一定の基準に適合した住宅家屋を指します。一定の基準は、以下のとおりです。

  • ● ZEH水準省エネ住宅=断熱等性能等級5以上であり一次エネルギー消費量等級6以上でもあること(日本住宅性能表示基準)
    ● 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上もしくは免震建築物であること
    ● 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること

3つのうち「断熱等性能等級5以上であり一次エネルギー消費量等級6以上でもあること」は、令和6年度の改正により設けられた基準です。

令和6年度「税制改正前」の基準は「断熱等性能等級4または一次エネルギー消費量等級4以上であること」です。これは、令和5年末までに建築の確認を受けた住宅、もしくは令和6年6月30日までの期間に建築された住宅が対象となります。

改正後の基準断熱等性能等級5以上であり
一次エネルギー消費量等級6以上でもあること
改正前の基準断熱等性能等級4または
一次エネルギー消費量等級4以上であること

 

 

贈与税非課税制度のポイント

贈与税非課税制度のポイントは、相続時精算課税制度と併用できたり、受贈者の年齢の基準が贈与を受けた年の1月1日である点です。次で、詳しく解説します。

 

相続時精算課税制度と併用できる

贈与税非課税制度を超えた贈与は、相続時精算課税制度を適用できます。

たとえば、省エネ等住宅の建物で非課税の限度額1,000万円を超えても、超えた分は最大で2,500万円までは贈与税の負担はありません。

 

受贈者の年齢は「贈与を受けた年の1月1日」が基準

前述のとおり、受贈者の年齢は「贈与を受けた年の1月1日」時点で年齢が18歳以上であることが適用要件の一つとなっています。

また、贈与税非課税制度は年齢だけでなく、贈与を受ける日や住宅取得の日、居住の日など日付に関する要件が複数ありますので、留意しましょう。

 

 

贈与税非課税制度の注意点


ここでは、贈与税非課税制度の注意点について解説します。

申告時の注意点

贈与税の申告の際は、特例を受ける旨を記載した贈与税の申告書「第一表に加えて第一表の二(住宅取得等資金の非課税の計算明細書)」を作成し納税地の所轄税務署に提出します。

このとき、申告書には住宅用家屋の取得等の態様区分にあたる「新築」や「取得」の契約書の写しや、戸籍謄本など一定の書類の添付が必要です。

なお、添付書類や要件は多岐にわたりますので、国税庁の「チェックシート」を利用するとよいでしょう。

参照:国税庁「<令和5年分用>住宅取得等資金の贈与税の特例に係る「チェックシート」及び「添付書類」の区分

 

少しでも期限を過ぎたら適用できないので注意

申告の期限は、必ず守りましょう。申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までにおこないます。

申告期限に間に合わない場合は贈与税の課税対象となり、納税しなければなりません。また、延滞税の支払いや無申告と判断されて加算税もかかるケースがあります。

 

所得金額が2,000万円超は対象外

所得税にかかる合計所得の金額が2,000万円超の場合は、贈与税非課税制度の対象外となります。

また、床面積が40㎡以上かつ50㎡未満の場合では、合計所得の金額が1,000万円以下の受贈者が対象です。

50㎡以上かつ240㎡以下合計所得の金額が2,000万円以下
40㎡以上かつ50㎡未満 合計所得の金額が1,000万円以下

なお、合計所得の金額とは贈与を受けた年の1月1日から12月31日までの所得であり、以下のような所得が含まれます。

  • ● 給与所得
    ● 退職所得
    ● 譲渡所得
    ● 一時所得
    ● 配当所得
    ● 利子所得
    ● 雑所得 など

そのため、不動産の売買があったり、株で利益が出たりすると合計所得の金額が増えるため、贈与税非課税制度の対象外になることがあります。

 

まとめ


令和6年度税制改正により、住宅取得等資金の「贈与税非課税制度」が3年間延長されました。

贈与税非課税制度には、受贈者や住宅に関する多くの要件があります。また、必ず申告が必要であることなど注意点もありますので、事前の確認が必要です。

贈与税は高額になるケースがあるため、住宅を取得する予定がある場合は「贈与税非課税制度」をうまく活用するとよいでしょう。

※なお、本記事は令和5年12月22日に閣議決定された「令和6年度税制改正の大綱」に基づき作成しています。通常、税制改正は3月に国会の承認を経て4月1日に施行されるため、詳細については変更となる可能性がある点にご留意ください。

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