多くの経営者が「赤字だと融資が受けられないのでは…」と不安に感じています。
確かに、黒字であることが望ましいですが、さまざまな理由で赤字になることもあるでしょう。赤字の場合、経営を続けるためには銀行からの融資が不可欠なケースも多いと考えられます。
この記事では、赤字の状態でも銀行から融資を受けられる可能性や、融資を受けるためのヒントについて詳しく解説します。
赤字の状態でも融資を受けられれば、経営の立て直しが期待できますので、ぜひ最後までお読みください。
赤字とは
赤字とは、簡潔に説明すると、収入より支出が上回り、利益が出ていないことをいいます。手元に残るお金がないため、事業の継続や設備投資が難しい状態です。
「赤字になると倒産するのではないか?」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、赤字の会社は多く存在しています。
国税庁が公表している「国税庁統計年報書」によると、令和3年度における赤字の法人の割合は「61.7%」であり、黒字の法人より多いようです。しかし、赤字の状態が続くと、一般的には資金が減っていくため、健全な財政状態とはいえません。
具体的にどのような影響があるかについては、次で詳しく解説します。
赤字はデメリットだらけ?
赤字経営は、税金面で支払いを抑えられる面もありますが、デメリットも多くあります。
基本的に税金を納めなくてよい
会社に利益が出ると、利益に対して法人税を支払わなければなりません。
しかし、赤字の状態では利益は出ていないため、法人住民税の均等割などを除き、基本的には税金を支払う必要はありません。
赤字を繰り越せる
赤字決算で生じた損失は、法人の場合、10年間繰り越すことが可能です。翌年以降の課税所得と相殺することで、法人税の納付額を減らすことができます。
上の図のように、2022年の赤字2000万円分を、2023年の利益800万円と相殺し、さらに2024年の利益1300万円のうち、残りの繰越額1200万円を相殺できます。
その結果、2024年の課税所得は100万円となるため、法人税の負担を軽減できるのです。
ただし、損失を繰り越すためには以下の条件を満たす必要があります。
・赤字が出た事業年度に青色申告書である確定申告書を提出している ・その後の事業年度も連続して確定申告書を提出している |
債務超過に陥る
赤字が続くと、最終的には資産より負債が大きくなり、債務超過の状態に陥る可能性が高くなります。
多額の負債を抱えると、通常、現金の支出が収入を上回り、資金繰りが難しくなるため、企業の存続が危うくなる可能性があります。
金融機関からの印象が悪い
赤字決算が続くと、債務超過に陥る可能性が高くなります。この場合、金融機関からの印象が悪くなることがあるため資金調達が難しくなるでしょう。
金融機関は決算書などを基に格付けをおこなっており、そのランクを参考にして、融資の可否や金利の条件などを決定しています。
債務超過の状態は、この格付けを下げる要因になります。それにより、融資を受けるハードルが高まるのです。
赤字でも融資の可能性があるケース
赤字の状態でも、融資を受けられる可能性のあるケースを紹介します。
返済に遅延がない
借り入れの返済に遅延がないことは、融資を受けるうえでとても重要です。
毎度の返済期限を守ることで、信用できる会社であることをアピールできれば、融資を検討してもらえる可能性があります。
償却前の経常利益が黒字である
減価償却前の経常利益(経常利益+減価償却費)が黒字の場合、金融機関からの格付けが上がるとされています。
減価償却費は毎年計上されますが、実際に支出を伴うわけではないため、現実のお金の動きに近いとされる償却前の経常利益で判断されます。
減価償却前の経常利益が黒字であれば、キャッシュフローが安定していると評価され、融資が受けやすくなるでしょう。
災害等の突発的な事情により赤字になっている
地震、台風、豪雨などの被害にあったことが原因で業績が悪化し、結果として赤字になった場合は、公的機関の支援制度(融資制度等)を受けることができる可能性があります。
たとえば、日本政策金融公庫では「災害貸付」という制度を設けており、災害で被害にあった場合のほか、取引先が被災したことで売上が下がったなどの事情があれば、制度の対象となります。
ほかにも、新型コロナウイルス感染症の影響により業績が悪化し、赤字になった会社に対して、日本政策金融公庫が特別貸付(新型コロナウイルス感染症特別貸付)をおこなっています。
これらには審査があるため、必ず貸付を受けられるとは限りませんが、業績が回復する可能性が高いと判断されれば、融資を受けられる可能性は高まるでしょう。
地域にとって必要不可欠な事業をおこなっている
病院や公園などの公共施設や、電車や飛行機などの交通機関に関する事業をおこなっているなど、公共性の高い事業をおこなう企業の場合は、融資が受けやすいといわれています。
金融機関は、基本的に、融資によって社会や経済の発展に貢献しなければなりません。
たとえば、地域唯一の総合病院が赤字である場合は、倒産することで多くの人の生活に影響を与えかねないため、融資を受けられる可能性が高まるでしょう。
このように、赤字であったとしても、公共性が高い事業であれば、公共性の原則を果たすために、金融機関が融資をおこなうことがあります。
赤字でも融資を受けるためのコツ
融資を受けるには、金融機関の審査に通らなければなりません。このセクションでは、融資を受けるためのコツについて解説します。
将来性のある事業計画書を作る
金融機関は、融資の審査において、事業計画書から経営内容や財務状況を確認し「事業が継続できるか」や「返済能力はあるか」などを判断しています。ここでは、事業計画書の作成ポイントについて解説します。
現実的な損益計画か?
損益計画に書かれた売上目標などは、実現できそうな数字でなければなりません。そのためには、算出した売上や経費等の数字の根拠を具体的に示しておくことが大切です。
仮に、飲食店の場合であれば「1日の目標売上を20万円と設定した根拠は、客単価が2千円で毎月100人を集客すると想定したものである」のような、具体的な記載をするとよいでしょう。
課題は明確になっているか?
現在の売上状況等を細かく把握し、何が課題か明確にしておくことが大切です。
たとえば、ビジネス街の中心に飲食店を構えているにもかかわらず、サラリーマンの顧客が少ない状況であれば、そのエリアで働くビジネスパーソン向けの集客方法を考える必要があります。
解決策は具体的に書かれているか?
課題の解決策が曖昧である場合は、実現可能性が低くなります。赤字を解消するのは容易なことではないため、長期的な視点で解決策を練る必要があるでしょう。
売上アップ、経費削減、広告の強化など、さまざまな領域において解決に向けた取り組みが必要になります。短期目標と長期目標を設定し、段階的に解決していけるような工夫が必要です。より具体的に設定することで、達成までの道筋が見えやすくなるでしょう。
前述のとおり、金融機関は事業計画書を通して、融資した場合に返済できそうか、利益が生まれそうかなどを判断します。説得力のある事業計画書を作ることが、融資を受けるためのポイントとなるでしょう。
資金繰り表を作る
資金繰り表は、一定の期間の間に現預金がどのように動いたかをまとめたもので、お金の流れをわかりやすく説明するのに役立ちます。
出典:J Net 「資金繰り表って何ですか?また、どのようにして作成するのですか?」
資金繰り表は、現金の動きが詳細に記載されるため、売掛金の入金や買掛金の支払いがいつあるのかなどを具体的に把握できます。金融機関に対して「なぜ今融資が必要なのか」を説明できるため、返済計画についても説得力が増すでしょう。
また、お金の流れを明確に把握できるため、支出が多いか収入が多いのかを一目で判断できます。収支がマイナスになっても、改善できるポイントを早期に発見することができるため、早めに資金繰りを立て直せるという利点もあります。
まとめ
この記事では、赤字の状態でも銀行から融資を受けられる可能性と、そのためのコツについて詳しく解説しました。
赤字であっても、財務状況や突発的な事情などがあれば、融資を受けられる可能性があります。また、融資を受けやすくするためには、事業計画書や資金繰り表をしっかりと作成することが重要です。
金融機関に対して、企業の健全性や将来性、返済能力を説得力を持って証明することが、融資を受けるためのカギとなるでしょう。
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