【税の歴史】日本にもペット税があった!?ユニークな税制度のウラには社会問題が!

日本にもペット税があった!?

日本には、所得税や消費税などさまざまな種類の税金がありますが、かつてペットに税金が課せられていた時代があったことをご存じでしょうか。驚くべきことに、現在もペット税を導入している国が世界各地に存在します。

現代の日本には馴染みがないペット税ですが、どのような目的で導入されているのでしょうか。

この記事では、ペット税の背景やその必要性を紐解き、犬やうさぎに関する日本の税の歴史について解説します。世界のペット税の現状についても触れますので、ぜひ最後までお読みください。

かつて日本には「ペット税」が存在した!

ペット税

かつての日本では、犬を飼う人が納める「犬税」が存在していました。意外なことに、犬税は約40年前まで運用されていた身近な税金だったのです。

さらに、西洋の文化を取り入れ始めた明治時代には、全国的にも珍しい「うさぎ税」が導入されています。うさぎ税は、当時の時代背景に深く関わる税金です。

このようなペット税だけでなく、クジラの捕獲に関する税金や競馬の開催者が納める馬券税など、日本には動物に関連する税が複数存在していました。

なぜ「ペット税」が必要?

日本ではペットを飼っていても納める税金はありませんが、世界には犬を飼うと納税義務が発生する「犬税」を導入している国があります。
犬税が導入される背景には、人と動物が共生できる社会を目指す目的があります。ここでは、その目的を大きく分けて2つ紹介します。

犬の放置フンに対する啓発と清掃費用のため

近年はマナーを守らない飼い主の増加により、公共の場に放置されている犬のフンは、深刻な社会問題になっています。

全国の自治体では、飼い犬の放置フンを防ぐための条例を制定するなど対策を講じており、放置フンの周りを黄色のチョークで円を描き、視覚的に警告する「イエローチョーク作戦」も全国的に広がりつつあります。

これらの取り組みにより放置フンの被害は減少しつつありますが、根本的な解決には至っていません。

もしペット税が導入されれば、飼い主のモラル向上を促し、税金の一部を清掃費用に充てることで、清潔で快適な街づくりにつながることでしょう。

参考:全国のフン害防止条例prevent.pdf

むやみにペットを飼う人への抑止力のため

2020年のコロナ禍をきっかけに、ペットを飼う人が増えました。しかし、最後まで飼う責任を果たさず、飼育を放棄する飼い主も少なくありません。

参考:ペットブームは頭打ち?|その他の研究・分析レポート|経済産業省

捨てられたペットは保健所などで引き取られますが、新たな飼い主が見つからない場合、殺処分されるのが現状です。

環境省のデータによると、令和4年度に引き取られた犬は22,392頭に対して、返還・譲渡されたのは19,658頭、そして、2,434頭が殺処分されました。

犬の殺処分件数は減少傾向にありますが、人間の都合により多くの犬が犠牲になっています。

出典:環境省「統計資料 「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況


ペット税の導入は、むやみにペットを飼う人を抑止し、無責任な飼育を防ぐための効果的な手段となるでしょう。

昭和50年代まで続いた「犬税」

かつての日本では、昭和50年代まで市町村税の一つとして「犬税」がありました。ここでは、犬税の歴史や約10年前に犬税の導入を検討した自治体について紹介します。

明治時代から府県税として課せられていた

元々犬税は、明治時代から府県税として存在していました。大正13年度の史料によると、府県ごとに課税方法が異なり、飼育地域のほか、猟犬や闘犬などの飼う目的に応じて課税の対象と税率を決めていたとされています。

また、京都府や群馬県では「狆」に対して特別税率が適用されるなど、珍しい犬税もありました。狆は、日本原産の愛玩犬として富裕層に人気があったことから、税率が高かったのではと考えられています。

参考:犬税|税の歴史クイズ|税務大学校|国税庁

犬の餌代にも税金が?!

さらに過去にさかのぼった江戸時代には、犬はペットではなく、殿様がタカ狩りに連れて行く猟犬として飼われていました。

武将の娯楽であるタカ狩りには、獲物の居場所を突き止めるために猟犬は必須だったのです。当時は、その猟犬の餌代に租税が課せられていました。

参考:犬銀という租税(答え)|税の歴史クイズ|税務大学校|国税庁

参考:犬税の最後(P14)tokyo_r02s_teacher.pdf

平成26年に犬税導入を検討した自治体があったが・・・

長い歴史を持つ犬税ですが、昭和57年の長野県四賀村を最後に廃止となっています。

しかし、廃止から約30年後の平成26年、大阪府泉佐野市が犬税の導入検討を発表しました。

泉佐野市では、放置フンの回収や音声啓発、放置フンに係る過料の引き上げなど、さまざまな対策を講じていましたが、大幅な改善には至りませんでした。

そのため、放置フンのさらなる啓発と処理に必要なコストを賄うことを目的に、市区町村に登録している犬1頭につき年間2,000円の犬税を課す計画を立てたのです。

導入に向けてアンケート調査を実施したところ、登録犬数と実際に飼っている犬数には大きな乖離があり、市区町村に登録されている犬数は約40%程度ということが判明しました。

泉佐野市が構想した犬税は登録犬の飼い主から徴収する仕組みであったため、未登録の犬を飼っている市民からは徴収できません。

このままでは税負担の公平性が担保できないと判断され、導入は見送りとなりました。また、徴収するためのコストがかかりすぎることも、導入は困難と結論づけられた一因とされています。

参考:導入検討から見送りまでhoukokusyo_inuzei.pdf

明治時代に対象になった「うさぎ税」

明治初期には、東京府で「うさぎ税」という新たな税が導入されました。ここでは、うさぎ税の歴史を、当時の時代背景とともにご紹介します。

外国産の珍しいペットとしてうさぎが大流行

日本の西洋化が大きく発展した明治5年の東京府では、希少価値の高い外国産のうさぎがペットとして大流行しました。

特に珍しい毛並みを持つうさぎには高値が付き、巡査の初任給が4円程度だった時代に、1羽数百円で取引されていたのです。

身分の高い商家の旦那衆や華族、士族、さらには僧侶までもが熱狂する「うさぎバブル」により、さまざまな社会問題が発生しました。

加熱しすぎたうさぎバブルの抑制

うさぎバブルが過熱するにつれて、うさぎを売買して一攫千金を狙ったり、投機目的で色を塗った偽物のうさぎが市場に出されるなどの異常事態が起こります。

このため、東京府はうさぎの投機を禁止する方向に動きますが、西洋文化を広めたい政府は、うさぎの売買を制限することに消極的でした。

そこで協議の結果、東京府は明治6年にうさぎ税を導入しました。うさぎの売買を認めるかわりに、1羽につき月1円(現在の8,000円)とかなりの重税を課したのです。


参考:P14(東京都租税教育推進協議会作成資料)tokyo_r02s_teacher.pdf

重税による投機熱の収束

うさぎ税は、毎月1円の課税に加えて、飼育するうさぎの届出義務や無届だと2円の罰金を課すなど、うさぎを売買する投機する人々にとってかなり負担がかかる税金でした。

このうさぎ税により投機熱は次第に冷めて、うさぎバブルは終焉を迎えます。そして、明治12年には、うさぎ税が廃止されました。

うさぎブームは終わりを迎えましたが、その代償は大きなものでした。それまで大切に育てられていたはずのうさぎたちは非常に安く売買されたり、さらに悲しいことに、川に捨てられるなどの運命をたどることになったのです。

世界の犬税はどうなっている?

世界には、動物保護活動に注力する国が各地に存在しており、法制度の1つとして犬税が運用されています。ペット先進国と呼ばれるドイツ・ベルリンの犬税のほか、アメリカ・ニューヨークにおける飼い犬の登録料について紹介します。

ベルリンの犬税は「年間120 ユーロ」から!

人と犬の共生社会を実現するドイツでは、都市により犬税の金額が異なります。首都・ベルリンの犬税は、以下のとおりです。

1頭目120ユーロ/年
2頭目以降180ユーロ/年

出典:Senatsverwaltung für Finanzen Berlin「FAQ Hundesteuer
日本円に換算すると、1頭だけでも約2万円(1ユーロ160円で計算)と高額な税金を毎年納める義務があります。このように高額な犬税を導入して、犬の数を抑制することが目的とされています。

ニューヨークでは「年間 8.50 ドル」以上の登録料が必要!

世界有数の大都市であるニューヨークでは、犬税ではなくドッグライセンスを取得する必要があります。

ドッグライセンスの登録費用は、以下のとおりです。

避妊や去勢された犬8.50ドル/年
避妊や去勢されていない犬34ドル/年

出典:The Official Website of the City of New York「Dog Licenses

日本円に換算すると、年間約1,300円(1ドル150円で計算)と比較的安価ですが、避妊や去勢されているかで費用は大きく差があります。

ライセンス料は迷子犬の捜索のほか、犬の保護施設や避妊去勢の推進などの費用に充てられています。

まとめ::ユニークな税制度のウラには社会問題がある!

ペットに関する税金と聞くと、一見もの珍しくユニークな税金だと感じる方も多いでしょう。

しかし、その歴史を紐解くと、各時代の社会問題が浮かび上がってきます。江戸時代の将軍の娯楽から、明治時代の投機熱の抑制まで、その時々の社会情勢を反映した税制度として機能してきました。

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