IT導入補助金活用ガイド
IT導入補助金は、ITツールを使って業務効率化を図りたい事業者の強い味方です。
今回は「業務効率化をしたいけど導入するお金がない」「IT導入補助金について詳しく調べる時間もない」という方に向けて、IT導入補助金の活用方法をわかりやすく解説します。
2025年1月現在、2025年度の募集開始時期は公表されていませんが、IT導入補助金は公表から最初の募集開始までの期間が短いことが多いため、早めの対策が必要です。
計画的に事前準備して、申請をスムーズに進めていきましょう。
IT導入補助金とは?
IT導入補助金は、中小企業がITツールを導入するときの「導入費用」や「維持管理費用」を支援する補助金です。業務効率化だけでなく、DX推進やセキュリティ対策を目的とするITツールの導入費用も補助対象となっています。
IT導入補助金の基礎知識
中小企業庁の予算案概要によると、2025年のIT導入補助金の募集枠(申請類型)は、2024年と同じ5つの枠が設定されています。
「IT導入補助金2025(533KB)」(中小企業庁)を加工して作成
IT導入補助金は、飲食店が人手不足対策やお店の回転率向上のためにセルフオーダーシステムを導入する、インボイス枠であればクラウド会計ソフトを導入する、などの取り組みが対象です。
セキュリティ対策推進枠の「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」とは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が定めた要件を満たすセキュリティサービスのことです。サイバー攻撃を監視し、被害を最小限に抑えることを目的としています。
補助額や補助率は、申請類型やITツールにより異なります。補助額が5万〜450万円、補助率が1/2〜4/5まで設定されています。
スケジュールは?いつから申請できる?
2025年1月現在、2025年度のスケジュールは公表されていません。
2024年度は2月6日に応募の詳細が公表され、同月16日から募集の受付が始まりました。1次締め切りは3月15日(複数社連携のみ4月15日)であったため、最も早いスケジュールで応募したい場合は、公表から募集開始までの期間が短い可能性があるため注意が必要です。
IT導入補助金は、年間を通して複数の申請期間が設けられています。2024年度の申請期間の数は通常枠、インボイス枠(電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠が7回、インボイス枠(インボイス対応類型)が12回、複数社連携IT導入枠が4回でした。
2025年度も、おおむね2024年度と同じスケジュールになると予想されます。繰り返しになりますが、スケジュール公表から1次募集の開始まではあまり日数がありません。早めにツールを導入したい場合は1次募集に間に合うように準備しましょう。
申請できる事業者は?
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が申請できます。中小企業・小規模事業者の定義は、以下のとおりです。
「サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金 交付規程 通常枠」(IT導入補助金2024)を加工して作成
図の定義に該当する中小企業・小規模事業者であっても、大企業の子会社である場合など、対象外となるケースがあります。ご自身の事業が交付対象にあてはまるかを、必ず確認しましょう。
対象のITツールは?
対象となるITツールや補助範囲は、申請類型により異なります。
通常枠は、事業のデジタル化を目的としたITツール導入が対象です。ソフトウェアの購入費やクラウド利用料(導入ツールのランニングコスト・最大2年分)のほか、拡張機能などのオプション、保守や導入支援などの役務の費用も補助されます。
インボイス対応枠(インボイス対応類型)は、インボイス対応を目的としたITツールの導入が対象です。
インボイス制度に対応する会計ソフトなどのソフトウェアとオプション、役務の費用に加え、PCなど、ソフトウェアを使うためのハードウェアも補助されます。
インボイス対応枠(電子取引類型)は、インボイス対応の受発注ソフトを導入した発注者側の事業者が、取引先の分まで費用を負担する場合に活用できます。クラウド型のソフトウェアの費用とクラウド利用料(最大2年分)が補助対象です。
セキュリティ対策推進枠は、サイバー攻撃に備えるためのITツールと運用支援サービス両方を導入した場合の費用を補助します。「サイバーセキュリティお助け隊サービス」に登録されたITツールを導入する費用と、最大で2年分の保守費用が補助対象です。
【図で解説】IT導入補助金の申請手順
ここでは、IT導入補助金の具体的な申請方法について、2024年度の手順をベースに解説します。
まずは、全体の流れを図で確認しましょう。
「新規申請・手続きフロー(中小企業・小規模事業者等のみなさまの手続き)」(IT導入補助金2024)を加工して作成
2024年10月に会計検査院から公表された検査結果報告によると、2020年〜2022年のIT導入補助金事業において、検査を受けた445事業中41事業で何らかの不正がおこなわれたことが発覚しました。不正により交付されたIT補助金の額は、1億円以上になるとされています。
このような不正を防ぐため、2025年度は要件が厳しくなることが予想されます。必要書類や手順が増える可能性がありますので、申請の際は最新情報を必ず確認してください。
なお、複数社連携IT導入枠は、10者以上のグループ単位で申請が必要なうえに、申請自体も年間を通して1桁台とあまり活用されていません。そのため、本記事では、複数社連携IT導入枠以外の応募枠を前提に解説しています。
●Step1:GビズIDプライムを取得する
GビズIDは、行政への申請・届け出を電子でおこなうときに必要な認証システムです。アカウントの発行まで2週間ほどかかるので早めに申請しましょう。
なお、GビズIDプライムは、2つの申請方法があります。詳細は、デジタル庁「GビズID」をご確認ください。
「GビズID | Home」(デジタル庁)を加工して作成
アカウント発行後は、みらデジ経営チェックを実施します。
みらデジ経営チェック
「みらデジ経営チェック|みらデジ 独立行政法人中小企業基盤整備機構」(みらデジ 独立行政法人中小企業基盤整備機構)を加工して作成
みらデジ経営チェックは中小企業庁が提供する経営診断ツールで、通常枠の場合は必ず実施しなければいけません。詳細は、みらデジ「みらデジ経営チェック|みらデジ 独立行政法人中小企業基盤整備機構」をご参照ください。
また、SECURITY ACTIONの宣言も必要です。
SECURITY ACTION
「SECURITY ACTION セキュリティ対策自己宣言」(独立行政法人 情報処理推進機構(IPA))を加工して作成
SECURITY ACTIONは、情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度で、宣言を証明するIDがIT導入補助金の申請に必要です。IDの取得には1週間ほどかかるので、早めに済ませておきましょう。
セキュリティ対策といっても、パスワードの管理強化やデータ等の共有設定の見直しなど基本的なものが中心です。詳細は、「SECURITY ACTION 自己宣言の申込方法 : SECURITY ACTION セキュリティ対策自己宣言」をご確認ください。
(シェルパ税理士法人では、「SECURITY ACTION」制度において「二つ星」を宣言しております。SECURITY ACTION自己宣言「二つ星」を宣言いたしました › シェルパ税理士法人)
●Step2:ITツールを選ぶ
次に、目的に合わせたITツールを選びます。
「トップページ | IT導入補助金2024」(IT導入補助金2024)を加工して作成
2025年の補助対象はまだ公表されていないので、導入したいITツールが2025年も対象になるか確認する場合は、Step3のIT導入支援事業者へ問い合わせるとよいでしょう。
●Step3:IT導入支援事業者を選ぶ
「ITベンダー・サービス事業者のみなさまはこちら | IT導入補助金2024」(IT導入補助金2024)を加工して作成
IT導入支援事業者とは、ITツールの購入先のことです。IT導入補助金の申請には、IT導入支援事業者の協力が欠かせません。
2024年度は、公式サイトの「ITツール・IT導入支援事業者検索(コンソーシアム含む)」にてIT導入支援事業者の検索をすることができました※1。2025年度も、公式サイトに同様の検索ページが設置されると思われます。
現在、IT導入補助金の不正受給が問題となっています。不正受給にあたる行為をしないよう気を付け、信頼できるIT導入支援事業者を選びましょう。
IT導入支援事業者から見積もりを受け取ったら、内容が適正なものかを精査する必要があります。
補助金があるとはいえ、支出があることにはかわりありません。また、クラウド利用料等のランニングコストの補助期間は2年間です。これらを踏まえ、見積もりの内容をチェックするようにしましょう。
※1 2024年度の公募終了により、現在は検索できません
●Step4:交付申請する
「新規申請・手続きフロー(中小企業・小規模事業者等のみなさまの手続き) | IT導入補助金2024」(IT導入補助金2024)を加工して作成
準備が整い書類が揃ったら、交付申請をしてください。申請ページはIT導入支援事業者から提供を受け、GビズIDを使ってログインします。
ログイン後は必要な情報を入力し、書類を添付しましょう。すべての情報入力と書類添付が完了すると、IT導入支援事業者へ引き継がれます。
IT支援事業者の作業完了後、申請ページで内容を確認してください。問題なければ、事務局へ提出します。提出後に届く完了メールを、必ず確認しましょう。
後日、採否結果の通知メールが届きます。差し戻しの場合は不備があるはずです。不備を修正し、再度提出してください。
詳細は、IT導入補助金事務局から発行される、2025年度版の手引き※2をご確認ください。
※2 参考(2024年度版):「交付申請の手引き 通常枠・セキュリティ対策推進枠 インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)共通」(IT導入補助金2024)
●Step5:ITツールの発注・契約・支払いをする
無事に交付が決定されたら、IT導入支援業者と契約し、ITツールの導入・支払いをします。契約・発注の前に納品や支払いをすると交付が受けられないので注意してください。
●Step6:事業の実績を報告する
交付決定後は実際にITツールを導入し、実施結果を報告しないといけません。報告すると、事務局による検査がおこなわれます。検査結果に問題がなければ、IT導入補助金が交付されます。
「事業実施・実績報告にあたっての重点確認事項 通常枠・セキュリティ対策推進枠 インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)共通」(IT導入補助金2024)を加工して作成
詳細は、今後IT導入補助金事務局から発行される、2025年度版の手引き※3をご確認ください。
※3 参考(2024年度版):「事業実施・実績報告の手引き 通常枠・セキュリティ対策推進枠 インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)共通」(IT導入補助金2024)
●Step7:実施効果を報告する
IT導入補助金が交付されても、終わりではありません。1年度ごとに最大3年度まで、申請時に設定した目標が達成されたことを報告する必要があります。
なお、報告前にITツールを解約したり補助事業を中止したりした場合は、補助金を返還しなければいけません。報告は、必ずおこなってください。
よくある質問
IT導入補助金について、よくある質問をまとめました。申請する前の参考にしてください。
採択率はどれぐらい?
2024年の申請類型ごとの採択率は、以下のとおりです。
「交付決定事業者一覧 | IT導入補助金2024」(IT導入補助金2024)を加工して作成
申請すれば必ず交付されるの?
IT導入補助金は、申請すれば必ず交付されるわけではありません。交付決定は審査をクリアする必要があり、審査にとおった後も、一定の場合には交付決定が取り消されます。
申請とは異なる目的で補助金を利用した場合など、交付後もIT導入補助金を返還しなければいけないケースもあるほか、前述の不正発覚を踏まえ補助金交付後の抜き打ち検査がおこなわれることも考えられます。そのため、要領を必ず確認し、不正行為をおこなわないようにしてください。
まとめ
本記事では、2025年度のIT導入補助金について解説しました。
2025年度のスケジュールは公表されていませんが、詳細の発表から募集開始までの期間が短いと予想されます。事前準備やITツール・IT支援事業者の選定には時間がかかるので、早めの準備がおすすめです。
また、前述のとおり、IT導入補助金の不正受給が大きな問題となっています。信頼できるIT導入支援事業者を慎重に選ぶためにも、早期に対策をおこないましょう。
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