2025年4月17日に事業承継・M&A補助金「専門家活用枠」の公募要領が発表されました。他の枠についてはまだ公募が発表されていない状況ですが、随時発表されていくと思われます。
本記事では、2025年の事業承継・M&A補助金の概要や前年度との違い、さらに新設されたPMI推進枠についても詳しく解説していきます。
詳細や最新の情報は、事務局ホームページを確認するようにしてください。
事業承継・M&A補助金とは

近年、少子高齢化や経営者の高齢化により、事業承継の問題が中小企業にとって大きな課題となっています。こうした背景の中、日本政府は事業承継やM&Aを円滑に進めるための支援を強化しており、その一環として「事業承継・M&A補助金」が設けられました。
事業承継・M&A補助金は、事業承継やM&Aを円滑に進めるために必要な経費の一部について国から支援を受けることができる補助金です。昨年までは事業承継・引継ぎ補助金という名前でしたが、2025年から名称が変更されました。
事業承継やM&Aには、企業の経営権の移譲や、買収・合併に関する多岐に亘る手続きが伴います。具体的には、後継者選定、企業評価、契約書作成、デューデリジェンス(調査)などを行う必要があります。
また、事業承継後の経営維持のため新たな設備導入や新システムを導入する必要がある場合もあります。
このように、事業承継・M&A補助金は、これらの手続きを進める中で、新規の設備導入や専門的な支援を受けるための様々な費用に対して補助を受けることできる制度なのです。
4つの申請枠ついて

事業承継・M&A補助金には4つの申請枠が用意されており、事業承継やM&Aに必要なさまざまな取り組みが対象となっています。
現時点で公募要領が発表されているのは専門家活用枠のみであり、申請できるのも専門家活用枠のみとなっています。その他の枠については12次公募以降順次公募要領が発表される予定となっているため、常に最新情報を確認することが大切です。下記については以前公開された情報を基に作成しております。
2025年度における特筆すべき変更点は、PMI推進枠の新設です。これまでの補助金では、M&Aや事業承継の実施そのものに対する支援が中心でしたが、M&A後の「統合プロセス」に関しては支援が不足しているとの指摘がありました。このPMI推進枠の新設により、M&A後の統合にかかる専門的な支援が補助され、より包括的な支援が可能となったのです。
- 【公募開始】専門家活用枠:
M&A時の専門家活用に係る費用(フィナンシャル・アドバイザー(FA)や仲介に係る費用※、表明保証保険料等)に対する補助 - 【新設】PMI推進枠:
M&A後の経営統合(PMI)に係る費用(専門家費用、設備投資等)に対する補助 - 事業承継促進枠:
5年以内に事業承継を予定している場合の設備投資等に係る費用に対する補助 - 廃業・再チャレンジ枠:
事業承継・M&Aに伴う廃業等に係る費用(原状回復費・在庫処分費等)に対する補助
以下にそれぞれの概要を解説していきます。
【公募開始】専門家活用枠
専門家活用枠とは、後継者不在や経営力強化といった経営資源引継ぎ(M&A)のニーズをもつ中小企業者が、経営資源の引継ぎに際して活用する専門家の費用等の一部を補助することによって、地域の需要や雇用の維持・創造等を通じた経済の活性化を図ることを目的とした枠です。M&A時の立場に応じて買い手支援類型と売り手支援類型にさらに分岐し、それぞれに補助上限と補助率が定められています。
専門家活用枠 | |
---|---|
要件 | 補助事業期間に経営資源を譲り渡す、又は譲り受ける者 |
補助上限 | 50万~600万円 (DD費用を申請する場合、~200万円を上乗せ) (廃業費を申請する場合、~150万円を上乗せ) |
補助率 | 買手支援類型:2/3 売手支援類型:1/2・2/3※ (※①赤字、②営業利益率の低下(物価高影響等)のいずれかに該当する場合のみ2/3) |
対象経費 | 謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料、廃業費 |
公募スケジュール
専門家活用枠の公募スケジュールは以下の通りです。
公募要領公開 | 2025年3月31日 |
公募受付開始 | 2025年5月9日 |
公募〆切 | 2025年6月6日 17:00 |
採択通知 | 7月上旬 |
交付申請・交付 | 7月中旬~ |
補助事業実施期間 | 交付決定から最大12ヶ月程度 |
上記スケジュールは公募要領公開時点での予定であり、変更となる可能性があります。
申請までの流れ
- 本補助金の公募要領や Webサイト掲載情報を確認し、補助事業の理解を深める
- 補助金の対象となる、M&Aに際しての専門家活用等について検討を行う
- 公募に申請する場合に必要となる、GBizIDプライムアカウントを取得する(未取得の場合)
- 公募申請に必要な書類の準備を行う
- オンライン申請フォーム (jGrants)にログインし、公募時の申請情報を記入する。併せて必要書類を添付する
- 提出処理を行い、提出完了を確認する
- (提出完了後)事務局から申請の差し戻し・再提出依頼が来たら速やかに対応する
注意点やポイント
- 専門家活用枠では、補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合(補助対象事業において、クロージングしなかった場合)、補助上限額が300万円以内と減額されてしまうため、補助事業期間内のM&A(経営資源引継ぎ)実施完了することが重要です。
- 補助対象経費で仲介・FA業務の委託費を申請する場合は、令和3年に中小企業庁が定めた「M&A支援機関にかかる登録制度」に登録した専門家を活用することが条件となります。また、その専門家との委託契約は交付決定日以降に契約を締結する必要があるため注意が必要です。
- 買い手支援類型においては、M&A成立後のトラブル防止、PMIに資する有益な情報取得の観点等から、補助対象経費の計上有無に関わらず、デュー・ディリジェンス(DD)の実施が必須となります。DD費用に関して、経費の補助申請が可能です(最大200万円)。
【新設】PMI推進枠
PMI推進枠は、M&Aに伴い経営資源を譲り受ける予定の中小企業等に係るPMIの取り組みを行う事業者が受けられる補助枠です。
経営統合(PMI:Post Merger Integration)とは、M&A(企業合併・買収)後の統合プロセスのことを指します。PMIの目的は、シナジー効果を最大化し、両社の経営資源をうまく統合することです。これにより、効率化やコスト削減、新たな市場開拓などの成果が期待されるため、M&Aを行う事業者にとって必要不可欠なプロセスといえるでしょう。
PMIを実施する際には、いくつかの経費が発生します。主な費目は以下の通りです。
- 組織再編費用:
役職変更や部門統合に伴う人事制度の見直し、従業員教育にかかる費用 - システム統合費用:
ITシステムやソフトウェアの統合に必要な費用(データ移行や新システムの導入を含む) - 法律・契約関連費用:
契約の見直しや法的手続きに伴う弁護士費用 - コミュニケーション費用:
社員や取引先への通知や説明に必要な広告・広報活動費
このように、PMIを適切に行うことにより企業の競争力は向上しますが、そのためには多くの経費が発生します。今回新設されたPMI申請枠では、これらの費目の中の設備費、外注費、委託費等について補助を受けることができます。枠内でさらにPMI専門家活用類型と事業統合投資類型に分岐し、それぞれに補助上限と補助率が定められています。
PMI推進枠 | |
---|---|
要件 | M&Aに伴い経営資源を譲り受ける予定の中小企業等に係るPMIの取り組みを行う者 |
補助上限 | ・PMI専門家活用類型:150万円 ・事業統合投資類型 :800~1,000万円 (一定の賃上げを実施する場合、補助上限を1,000万円に引き上げ) |
補助率 | ・PMI専門家活用類型:1/2 ・事業統合投資類型:1/2・2/3 (中小企業者等のうち、小規模事業者に該当する場合:2/3) |
対象経費 | 設備費、外注費、委託費等 |
事業承継促進枠
事業承継促進枠は、5年以内に親族や従業員に事業承継を予定している事業者が受けられる補助枠です。前回までは「経営革新枠」として公募されていた枠ですが、2025年は事業承継促進枠へと名称が変更されました。対象経費は経営革新枠とほとんど変わりありませんが、昨年度よりも補助上限額が200万円引き上げられました。詳細は公募要領が発表された後によく確認するようにしてください。
事業承継促進枠 | |
---|---|
要件 | 5年以内に親族内承継又は従業員承継を予定している者 |
補助上限 | 800~1,000万円 (一定の賃上げを実施する場合、補助上限を1,000万円に引き上げ) |
補助率 | 1/2・2/3 (中小企業者等のうち、小規模事業者に該当する場合:2/3) |
対象経費 | 設備費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費 等 |
廃業・再チャレンジ枠
廃業・再チャレンジ枠は、事業承継やM&Aの検討・実施等に伴って廃業等を行う事業者が、原状回復費・在庫処分費の廃業等に係る費用について受けられる補助枠です。廃業・再チャレンジ枠は事業承継促進枠や専門家活用枠、PMI枠の事業統合投資類型と併用することができます。
廃業・再チャレンジ枠 | |
---|---|
要件 | 事業承継やM&Aの検討・実施等に伴って廃業等を行う者 |
補助上限 | 150万円 (事業承継促進枠、専門家活用枠、事業統合投資類型と併用申請する場合は、 それぞれの補助上限に加算) |
補助率 | 1/2・2/3 (事業承継促進枠、専門家活用枠、事業統合投資類型と併用申請する場合は、 各事業における事業費の補助率に従う) |
対象経費 | 廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費用 (併用申請の場合のみ) |
まとめ

いかがでしたか?
本記事では事業承継・M&A補助金について概要やポイントについて解説してきました。
事業承継やM&Aは、特に中小企業にとって重要な課題です。2025年の事業承継・M&A補助金では、従来の支援枠に加え、PMI推進枠が新設され、M&A後の企業統合をよりスムーズに進めるための支援が強化されました。これにより、M&Aを実施した企業が統合後に直面する課題に対応できるようになり、中小企業の事業承継・M&Aが円滑に進むことが期待されます。
第11次公募は専門家活用枠のみの公募となりましたが、今後はその他の枠も随時公募要領が発表されていく見込みとなっています。最新情報をチェックし、速やかに申請できるよう備えておくことが大切です。
本補助金を有効活用することで、永続的な会社経営のためのより良い支援を受けることができるでしょう。
申請枠や事業計画作成に迷われた際は、ぜひビジネス・カタリストをはじめとしたシェルパグループにお気軽にお声がけください。
本記事が事業承継・M&A補助金の理解を深めるうえでお役に立てますと幸いです。

補助金・助成金についてのご相談はこちらから
ご依頼及び業務内容へのご質問などお気軽にお問い合わせください
記事監修

この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。
コメント