社用車を下取りに出して、高く売れるのは喜ばしいことです。一方で、税金がどのくらいかかるのか、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
社用車は購入金額を、一括で経費にできません。下取りの際の税額がどのくらいか把握するには、会計処理の仕組みを知っておくことが重要です。
この記事では、下取り時の税金の計算方法や仕訳の方法と注意点、さらに節税のポイントまで詳しく解説しています。ぜひ、最後までお読みください。
社用車の下取りで税金がかかる?
社用車を下取りに出すと、税金がかかる可能性があります。下取り時の税金は、車の取引に関する会計処理を知ることが重要です。ここでは、社用車の会計処理と、税金が計算される仕組みについて解説します。
原則、取得時に一括で経費にできず「資産」となる
社用車を取得したときは、原則、取得金額を一括で経費に計上できません。
社用車は、複数年使用を前提とする「資産」になるため、取得価額が10万円以上の場合は、原則として法定耐用年数に基づいた年数で複数年にわたって経費とします。
毎年経費に計上し続けると、社用車の資産価値も年々減少します。この仕組みを理解し、現在の価値を把握することで、下取り時の税金が理解しやすくなるでしょう。
売却額と帳簿価額の差で税金が計算される
社用車の下取り時の税金は、売却額と帳簿価額の差で計算されるのが基本です。具体的には「売却損益=売却額-帳簿価額」という式で表されます。
今回は「帳簿価額が30万円の社用車を40万円で下取りに出したケース」を例に考えてみましょう。このときの売却益は、40万円-30万円=10万円となり、差額の10万円が課税対象です。
税金を計算するのには、社用車の帳簿価額の把握が重要となります。
社用車は、法定耐用年数を過ぎて下取りに出すと、帳簿価額は1円となるのが一般的です。そのため、耐用年数経過後は売却額のほぼ全部が、課税対象の金額になります。
このように、社用車の下取り時の税金を計算するときは、帳簿価額が大きく影響します。
帳簿価額は取得価額と減価償却累計額によって決まる
帳簿価額は、社用車の下取り時の税額計算で重要な指標となります。取得価額から減価償却累計額を差し引くことで、計算が可能です。
たとえば、300万円で購入した社用車の場合、減価償却累計額が100万円だったとします。この場合、帳簿価額は300万円から100万円を差し引き、200万円となります。
下取り時の税金は帳簿価額と売却額の差額で課税されるため、帳簿価額の考え方を把握することで、税金を考慮した資産管理が可能となるでしょう。
社用車を下取りに出したときの仕訳と注意点は?
社用車を下取りに出すときの仕訳について、次の2つの視点から解説します。
- 下取りする際の仕訳のやり方
- 注意点
下取りする際の仕訳のやり方
社用車の下取り時の仕訳を、具体例を用いて解説します。今回は、分かりやすくするため、直接法を用いて計算をおこない、消費税やリサイクル預託金は省略します。
仕訳は、以下のとおりです。
下取り価格の30万円は「現預金」として借方に記載し、帳簿価額の70万円は「車両運搬具」として貸方に記載します。借方と貸方の差額40万円は「固定資産売却損」として借方に計上されます。
借方に記載するのは、購入金額500万円の「車両運搬具」と、売却損40万円の「固定資産売却損」です。これにより、借方合計は540万円となります。
貸方は、帳簿価額70万円を「車両運搬具」として記載し、最後に470万円を「現預金」として記載します。
今回は、分かりやすくするため、2パターンある仕訳の方法のうち、直接法を用いて解説しました。また、消費税やリサイクル預託金も省略しています。
実際の仕訳では、これらを注意点として知っておく必要があるので、以下で詳しく解説します。
注意点
ここでは、仕訳の注意点について解説します。
直接法と間接法がある
社用車を下取りに出す際の仕訳は、減価償却の方法を知り、社用車の現在価値を把握することが大切です。減価償却の方法には、直接法と間接法の2つの方法があります。
直接法は、社用車の取得価額から減価償却費を差し引いて、資産の現在価値を算出する方法です。
この方法は、取得価額が表面上に出てきませんが、簡易的で分かりやすいといったメリットがあります。
下取りの仕訳をするときは、直接法により算出した資産の現在価値を「車両運搬具」とし、貸方に記載します。
間接法は、社用車の取得価額と減価償却の累計額の両方を記帳する方法です。
この方法では、社用車の取得価額を残して記帳することが可能となります。
下取りの仕訳を間接法でおこなうときは、社用車の取得価額を「車両運搬具」として貸方に、下取り金額と減価償却累計額を借方に記載します。
消費税の取り扱い
社用車下取り時の仕訳における、消費税の会計処理は「税込処理」と「税抜処理」の2つがあり、それぞれ特徴があります。
税込方式は、取引金額に消費税を含めて仕訳をおこなう方法です。この方法は、会計処理が簡易的であるため、中小企業の多くで採用されています。
税抜方式は、取引金額と消費税を分けて仕訳をおこなう方法です。この方法では、会計処理が複雑になりますが、消費税の把握を容易におこなうことができます。
消費税の会計処理は、消費税の課税事業者か否かで対応が異なります。
課税事業者の場合、税込処理と税抜処理のいずれかの選択が可能です。一方、免税事業者は消費税の申告納税の義務がないため、会計処理はすべて税込処理となります。
なお、下取り時の消費税は、売却額についてかかってきます。先の仕訳例では、下取り額30万円が消費税の課税対象です。
消費税の取り扱いにおける仕訳は、税抜方式の方が複雑です。会計ソフトへの入力時も、消費税の集計に誤りがないか注意しましょう。
リサイクル預託金の取り扱い
リサイクル預託金は、自動車リサイクル法に基づき定められた費用で、廃車するときの費用を事前に負担する制度です。
この預託金の仕訳は、購入時には借方に資産計上し、下取り時には資産を譲渡することとなるため貸方に記載します。また、預託金は下取り時に金銭債権の譲渡として取り扱うため、消費税は非課税です。
税務計算を適切におこなうために、この預託金は忘れないように注意しましょう。
社用車を下取りに出すときのポイントは?
社用車を下取りに出す際に、節税できるポイントがあります。ここでは、「自動車税」「自動車重量税」の節税方法を解説します。
自動車税の納税時期を考慮する
自動車税は、毎年4月1日時点の所有者に課税される税金です。社用車の下取りは、この納税時期の4月1日以前に済ませることで、節税が可能となります。
もし、社用車の下取りを検討している場合、4月1日の納税時期を考慮するとよいでしょう。
自動車重量税の納税時期を考慮する
自動車重量税は、新車購入時や車検時に納付する税金です。社用車の下取りは、車検前に済ませると節税が可能となるでしょう。
この自動車重量税は、新車を購入するときに3年分、車検のときに2年分「前払い」する税金で、新車の購入や車検の支払いに含まれるものです。
車検の更新前に下取りに出すことで、車検代だけではなく税金も節約が可能となります。
もし、事情により車検直後に社用車を下取りに出すことになっても、前払いした自動車重量税は、原則として戻ってくることはありません。
まとめ
社用車を下取りに出して高く売れたときは、売却額と社用車の帳簿価額の差額が税金の対象となります。
この帳簿価額は、購入時の金額から経費としてきた減価償却費の合計を差し引いて求めます。帳簿価額を把握することで、売却時の税金がどのくらいかかるのかを検討しやすくなるでしょう。
さらに、自動車税や自動車重量税の納税時期を考慮することで、節税も可能となります。適切な会計処理と知識を持ち、効果的な経営判断につなげていきましょう。
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